TVアニメ放送決定記念として、原作の竹嶋えく、木野ひまり役・嶋野花、朝凪依役・瀬戸麻沙美の座談会が実現。物語やキャラクターへの思い入れやアフレコ秘話などをたっぷり語ってもらった。

――まず竹嶋先生に伺いたいのですが、本作のアニメ化が決まったときの心境は覚えていますか？

竹嶋　自分の作品がアニメになるなんて考えられなかったので、検討しているというお話をいただいたときは本当に嬉しかったです。一作家としてやっぱりアニメ化への憧れはすごくあったので。無事に決まったときはホッとしました。ただ、私の力というよりは一緒に『ささ恋』を作ってくれたスタッフの方々やファンの皆様のおかげだと思うので、いつも応援してくださる皆様にても感謝しております。

――いよいよ放送も近づいていますが、実感としてはいかがですか？

竹嶋　やっぱりまだ信じられません。放送が始まっても実感できるかどうか（笑）。制作が進んでいくたびに、私の作品がアニメ化するんだなとは感じますが、なんだか不思議な気分です。

――嶋野さんと瀬戸さんはこの作品にどんな第一印象をお持ちになりましたか？

嶋野　オーディション原稿に原作の切り抜きがついていたんです。依先輩がひまりに“ひとめぼれ”をするシーンは、私も依先輩視点のひまりを見て「あ、かわいい……」と思いました（笑）。それが初めて見たひまりで、そこから原作を読ませていただいたんです。女の子同士の恋愛作品をあまり読んだことがなかったので、どんな感じなんだろうと思っていたら、胸キュンあり、切なさありで一気読みしたのを覚えています。

瀬戸　原作を読ませていただいたときに、どのコマも、どの女の子もみんなキラキラしていて素敵だなと思いました。髪の毛のような細かい部分の動きも繊細で、そういう部分で感情を表現されているのかな、なんて勝手に想像を膨らませていました。

竹嶋　そう言っていただけて、めちゃめちゃ嬉しいです！

――役はオーディションで決まったんですか？

瀬戸　テープオーディションでした。なんとなく可能性があるのは依かなとは思っていたんですが、オーディション用の素材を作るときに私は役に合いそうな声優さんを思い浮かべてしまうんです。勝手に想像しては「きっと私じゃないな」と卑屈になることもあって。でも、役作りをしていくうちにどんどん依に惹かれ、演じたい気持ちが強くなっていたので、自分なりの依を作って提出しました。

嶋野　受かったときは嬉しいと思うと同時に、「ひまりちゃん、私の声なんだ」って他人事みたいに驚きました。

瀬戸　テープオーディションだと、何が正解だったのかわからないもんね。

嶋野　そうなんです。アフレコの前にPVの収録があったんですが、そのときもまだ「私で本当にいいんですか？」と戸惑っていました。

――竹嶋先生がお二人のお芝居のどんなところに惹かれたかを伺いたいのですが、まずひまりというキャラクターを描くうえで気をつけていることを教えていただけますか？

竹嶋　ひまりは明るくて素直で、思ったままに行動してしまう子です。私はそれが彼女の良いところだと思っているんですが、ともすると自己中心的に見られかねないんです。それは気をつけたいポイントだと思っていて、ひまりを描く際は自由に行動しているように見えても、しっかり考えたうえで行動していることが伝わるような描き方を心がけるようにしています。それと、ひまりは愛されキャラなので、なるべくかわいく描いてあげられるように頑張っています！

――そうすると、ひまり役にも“愛されキャラ感”を求められたのでしょうか？

竹嶋　どちらかというと、かわいいを前面に出した演技よりも自然体でかわいい方がいいなと考えていました。確か、ひまり役は60人くらいのテープを聞かせていただいたんです。

嶋野　え～！　聞くのだけでも大変ですよね？

竹嶋　初めての経験だったので、すごく難しかったです！　でも、嶋野さんの演技にはまさに自然体のかわいらしさがあったんです。ぜひ嶋野さんにお願いしたいとお伝えしたところ、嶋野さんに決まったので本当によかったなと思いました。

嶋野　本当にありがとうございます！　瀬戸さんが先ほどおっしゃったように、私も役の声を勝手に想像しちゃうタイプで、最初はひまりも私よりかわいい声の方がやるんだろうなと思っていました。でも、絶対にやりたいキャラクターだったので、無理してかわいいを作るよりも私なりの正解を探って演じることにしたんです。先生のお話を伺って、それがよかったのかなと思いました。

――では、依についてはいかがでしょうか？

竹嶋　ぱっと見はイケメン風のキャラクターですが、実は内面はそんなにカッコいいタイプじゃないんです。ただカッコいいだけの女の子じゃなくて、「カッコいいのに心は乙女」というギャップを描きたいなと思い、依というキャラクターを作りました。へたれなところも多いけど、決めるときは決める子ではあります。女の子としてもかわいいし、カッコよくも見える。そう思ってもらえたらいいな、と。アニメで初めてご覧になる方はそのギャップに驚くかもしれません（笑）。

瀬戸　私のイメージする依が先生のおっしゃった依のイメージと同じでよかったです。私も依に似て少し卑屈な部分があるので、それも依を演じたいと強く思った理由の一つでした。

――竹嶋先生からご覧になった瀬戸さんのお芝居はいかがでしたか？

竹嶋　オーディションは監督さんと相談して瀬戸さんにお願いすることになりました。PVの収録はリモートで聞いていたので、じっくり聞かせていただいたのは第1話のアフレコだったんですが、もう私のイメージしている依そのままでした。本気で惚れ込んでしまい、「依の声、好きです！」とお伝えしたのを覚えています。

瀬戸　励みになりました！

竹嶋　ニュアンスの調整くらいで、リテイクもほとんどありませんでした。それから、依はギャップという点で一番コミカルなキャラでもあります。担当さんとは、カッコいい声の瀬戸さんにあんなセリフを言わせていいのかと話す場面が何度かありました（笑）。

瀬戸　よくデフォルメキャラになっています（笑）。でも、演者としても遊べるところなので、「こうくるか」と驚いてもらえたり、笑ってもらえたりしたら嬉しいなと思いながら演じさせていただきました。

――では、ひまりと依の関係性で注目してほしいポイントはどんなところですか？

竹嶋　「こうしたら面白いかな」と思って描いているのは、ひまりと依、どちらがリードするのかわからない関係性ですね。

瀬戸　確かに、ひまりもただかわいいだけかと思ったら、依を惑わせてくることが結構ありますよね？

嶋野　無自覚に依先輩をハッとさせるところがすごいです。

竹嶋　そうなんです。決してわざとやっているわけではなく、天然小悪魔みたいなところがあるんです。そんなひまりに赤面させられる依も、急にカッコいいことを言ってひまりを赤面させる。お互いにドキドキさせたり、させられたりする関係性は、見ていて楽しいんじゃないかなと思います。

嶋野　ひまりちゃんもドギマギさせられて終わるだけじゃなく、そこからドキッとさせるような言葉を返せるのが面白いなと思いました。

瀬戸　「ここまでやったら嫌われるかも」「でも、そっちがそうくるなら、私も……」みたいな駆け引きも楽しみにしていただきたいですね。

――嶋野さんと瀬戸さんの掛け合いをご覧になった感想はいかがでしたか？

竹嶋　お二人の声は本当にイメージ通りでした！あるライブの回では、自分が描いたはずなのに、お二人の演技を聞いたら泣きそうになるくらい感動してしまったのを覚えています。それと、演技面以外でも、お二人が支え合う姿がこちらに伝わってくるんです。嶋野さんと瀬戸さんがひまりと依をやってくださってよかったなと改めて思いました。

嶋野　『ささ恋』はレギュラーとして初めての現場だったので、わからないことが多いですし、求められていることに応えられているのか毎回不安でした。でも、瀬戸さんをはじめ、皆さんがいつも盛り上げてくださって。テスト（リハーサル）が終わったあとに「今のすごくよかった！」とか「めっちゃかわいい」と言ってくださったおかげで、本番も緊張せずにできましたし、現場に行くのが楽しみでした。

瀬戸　本当にひまりのお芝居がかわいいなと思ったのもあるんですけど、恋愛ものだとセリフによっては照れくさくなることがあるんです。依もこそばゆいセリフを急に言い出しますし、一瞬でも素になると気恥ずかしくなってしまって。そういうとき、シーンと静まりかえるより、私なんかははやし立てる感じでも触れてもらえたほうが安心するので、そういう意味合いも少しありました。

嶋野　確かに大事なセリフのあと、席に戻るときって照れくささがありますよね。そういうときに「マジー!?」とか「フー！」みたいな感じで反応していただくとホッとします。

瀬戸　特に嶋野ちゃんは初の主演だし、私たちが何をどうしたって緊張しちゃうと思うから。でも、作品が大好きで大切にしているのは伝わってきたから、緊張ばかりなのはもったいないし、できる限り収録を楽しんでもらえるように盛り上げたいなと思っていました。きっと、他のキャストさんも同じ気持ちだったと思います。

竹嶋　皆さん、楽しそうに収録されていて、見ているだけでこちらも嬉しくなりました。見学に行けない話数があると、知らない間に女子グループができている……じゃないですけど、担当さんが「声優さん達、めっちゃ仲良くなってますよ」って教えてくれるんです（笑）。和気あいあいとした現場なのもすごくよかったですね。

――本作は音楽も大きなテーマとしてありますよね。依がボーカルとギターを担当するバンド「SSGIRLS」と、泉志帆たちの「ローレライ」がどんな音楽を聴かせてくれるのかも楽しみです。最後に、音楽面での注目ポイントを教えていただけますか？

瀬戸　笹倉さんの「Humming Love」と水上さんの「メリトクラシー」を聴かせていただきました。どちらもクリエイターさんが違って、テイストも全然違うのに、「ささやいて」というフレーズが入っているんです。作品タイトルにも入っている「ささやく」が一つの軸になっているなと感じたので、ぜひ歌詞にも注目していただきたいです。

嶋野　SSGIRLSとローレライのどちらの楽曲もバンド要素が強く出ていて、音楽そのものの対比、物語内でのバンドの対決がより楽しみになりました。物語と音楽がしっかり絡み合う作品なので、あわせて楽しんでいただけたら嬉しいです。

竹嶋　音楽担当の方に、ノリやすいバンドサウンドの「SSGIRLS」、バチバチにカッコいい「ローレライ」と、うまく差をつけていただきました。現状の映像を確認させていただいた限りでは、アニメにも素敵な形で落とし込んでいただていると自信をもって言えるので、きっと視聴者の皆さんの心にも刺さるんじゃないかなと思っております。